峰山から百舌坂を下っていくと黒い焼杉板をまとった「宮脇町の家」が目に入ってきます。
この家は、高知県嶺北の林業家森本和広さんが曾おじいさんの代から育ててきた樹齢80年生の杉の木を梁や桁に使っています。
その木材の伐採現場へ建て主のご家族と共に赴き、森や林業のこと、そして山の暮らしなど山の方から直接お聞きしたことを昨日のことのように思い出します。
建物はご主人の希望で、外壁は黒い焼き杉板張り、南側の一部を土佐漆喰で仕上げています。
1階の南側には大きな木製建具の窓を設け、光と風を十分に取り入れられるようにしています。
ウッドデッキでコーヒーをいただきながら、ご主人に住み心地を聞いてみると「夏は風が良く通り暑くなく、外壁の土壁には断熱材が入ってないけれど、冬も思っていたより寒くないですね」との返事が返ってきました。
奥さまからは「時間をかけて皆で話し合って決めた間取りなので使い勝手には満足しています」と笑顔で答えられました。
色艶が少し深まった無垢の杉の床板には日々の暮らしの痕跡と共に、これからの家族の歴史がすこしづつ刻まれていくことでしょう。
「宮脇町の家」は平成19年度香川県木造住宅・高齢化対応住宅コンクール(香川県主催)におきまして木造住宅部門「優秀賞」を受賞いたしました。これも建て主様をはじめ、協力会社の皆様のご支援の賜物と深く感謝いたしております。
土、竹、紙、石、漆喰と無垢の木を中心とした自然素材を使用しました。
木材の製品検査の際は、一緒に林業家・森本氏の伐採現場を訪問。産地との交流を深めました。
漆喰壁に残した家族の手形!この瞬間が、思い出と共に形になって残ります。
対角や上下に窓を設けて風の道をつくり、南側の広い開口で日射しを確保しました。
まだ子どもが小さいため、現時点では子ども部屋は設けず、将来の子ども部屋を想定したプランとしました。
また、細かく部屋で仕切らず、家族の気配を感じながら暮らせる間取りを考えました。
伝統構法と一体になった土壁による粘り強い骨組みとしました。
職人さんたちにまじって「小舞竹編み」「土壁塗り」「三和土(たたき)土間づくり」「床塗装」などの作業にご家族も参加されました。
2階にご夫婦2人の書斎を設けました。